角膜移植全国調査 <結果の概要>
以下に2021年に日本角膜学会、日本角膜移植学会のサポートで行われたわが国における角膜移植の実態調査のサマリーを示す。詳細については以下の論文を参照のこと。
Shimazaki J, Soma T, Yamada K, Kobayashi A, Usui T, Inatomi T; Japan Corneal Transplantation Study Group. National Survey on Corneal Transplantation in Japan. Cornea. 2025 Feb 3. doi: 10.1097/ICO.0000000000003807. Epub ahead of print. PMID: 39898492.
1.調査の概要
日本角膜学会会員の所属する施設にアンケートを送り、2017年1月~2019年12月に行われた角膜移植症例について報告を受けた。調査協力施設の一覧は、https://links.lww.com/ICO/B773に示す。調査内容は、患者背景、角膜移植前の眼所見、施行された術式、術中術後合併症、1年後の移植片の透明性、再手術の有無などである。
2.患者背景
調査の結果、44の施設より計4,951例のデータが集まった。患者背景は、男性2,609例、女性2,333例、平均年齢は67.7±16.5歳であった。
3.角膜移植の原因疾患(図1)
原因疾患としては角膜浮腫(水疱性角膜症)が39.3%と最も多く、次いで再移植(27.7%)、角膜白斑(6.6%)、円錐角膜などのエクタジア(5.8%)の順であった。角膜浮腫の原因としては、白内障術後が25.1%で最も多く、次いで緑内障術後(20.8%)、レーザー虹彩切開術後(18.2%)の順であった。
図1 角膜移植の原因疾患

4.角膜移植の術式(図2、表)
DSAEKが最も多く行われ(41.3%)、次いで全層角膜移植(PKP、37.1%)、前部層状角膜移植(ALK, 8.3%)の順であった。DMEKの施行件数は127件(2.6%)であった。主な原疾患別の施行術式を表に示す。角膜浮腫に対しては内皮移植が行われた症例が8割を超えていたのに対し、全層角膜移植後の再移植で内皮移植が行われたものは2割強であった。また、円錐角膜などのエクタジアに対しては約3割でALK, DALKなどの前部層状角膜移植が行われていた。
図2 角膜移植の術式

表 原因疾患別の施行術式

5.考按
今回の調査では、角膜移植の原因疾患としては角膜浮腫が最も多かった。角膜浮腫の原因を、1999年~2001年に施行された症例に関する全国調査(Shimazaki J, Amano S, Uno T, Maeda N, Yokoi N; Japan Bullous Keratopathy Study Group. National survey on bullous keratopathy in Japan. Cornea. 2007 Apr;26(3):274-8.)と比較すると、緑内障術後の角膜浮腫が5.3%から20.8%と大きく増加していた。また、フックス角膜内皮ジストロフィも1.7%から10.9%と大きく増えていたことも目を引いた。これらの理由についてはさらなる検討が必要である。
角膜移植術式では、DSAEKが最多であった。前述の全国調査では、角膜浮腫の全例がPKPで治療されていたのに比べると隔世の感がある。一方でアメリカなどで増えているDMEKは調査期間内ではまだ少数例にのみ施行されており、今後の動向が注目される。