PTK(治療的角膜切除術)

治療的角膜切除術(phototherapeutic keratectomy:PTK)は、フッ化アルコンガスのエキシマレーザー(波長193nm)による組織の分子間結合の切断を用いて、角膜上皮からボーマン膜、実質の一部分までの病的部分を蒸散、切除するレーザー治療である。手術の適応疾患は、角膜表層に混濁や不整が存在する、角膜ジストロフィ(顆粒状角膜ジストロフィやAvellino角膜ジストロフィなど)や帯状角膜変性、角膜白斑などである。角膜実質中層〜深層のみに混濁がある症例は適応とはならない。また、再発性角膜上皮びらん等の創傷治癒や細胞接着を阻害する病変の除去、アカントアメーバなどの薬剤抵抗性の病原体の除去にも用いられる。

PTKの臨床使用は、海外では1991年頃から報告がみられ、本邦でも1998年に国内承認された。当初は自費治療で行われていたが、2001年3月に先進医療となり、2010年4月より保険対象の治療となった。保険の対象となる症例は、角膜ジストロフィと帯状角膜変性症による角膜混濁である。

PTKの適応疾患

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術前検査

病変部の角膜組織を切除するために、病変位置の広がりと深度を細隙灯顕微鏡で確認し、およその切除量を把握する。角膜を切除することにより、角膜の菲薄化とともに形状の変化が生じ、グレアやハローの原因にもなり得ることも考慮しなくてはならないため、角膜形状解析も必要である。また、前眼部光干渉断層計(Optical Coherene Tomography : OCT)で混濁深度を定量しておくと、より正確な切除量を予測することが可能である。次に、測定した角膜厚から可能切除深度を計算する。混濁除去のために過剰な切除を行うと、Keratectasiaなど重篤な合併症を来す場合があるため、注意しなければならない。一方、角膜の瞳孔領に角膜混濁があり視力低下を生じていたとしても、実際は白内障や眼底病変が影響して、追加手術が必要になることもあるため、角膜以外の病変の検討が重要である。抗精神病薬服用者への近視矯正エキシマレーザーによる角膜内皮障害の報告もあるので、内服薬の確認も必要である。

手術方法

  1. 頭位は、仰臥位で角膜が水平になるように固定する。麻酔は、ベノキシール、4%キシロカインなど点眼麻酔を使用し、消毒は白内障手術に準じる。
  2. 角膜表面を乾燥させる。エキシマレーザーは水を透過しないため、照射部の水分を十分除去しないと、レーザーが病変部に到達せず切除が行われない。そのため、結膜嚢と角膜上の水分を十分に除去しておく。
  3. レーザーの照射径は、通常6~7mmとする。照射量は、病変の深度に応じて異なるが、まず角膜上皮を切除する。その後は、病変部の除去程度を確認しながら、複数回に分けてレーザーを照射する。照射中は固視を保つように声かけを行う。角膜に血管侵入がある場合、出血することがあるので適宜拭き取る。
    • 角膜表層が混濁している症例
      まず、レーザーで角膜上皮を切除する。その後、可能切除量を超えないように、残存した混濁を確認しながらレーザー照射をする。角膜表面が乾燥していると混濁の程度がわかりにくい。そのため、適宜水分を滴下して残存した混濁を確認する。また、角膜輪部からライトガイドを用いて強膜拡散法を行うと混濁を確認しやすい。
    • 角膜表面が不整な症例
      上皮が正常であればレーザーで、上皮が不正であれば上皮剥離刀やスパーテルで角膜上皮を剥離する。混濁除去の際、実質の凹部に水分やヒアルロン酸等を塗布してマスクすることで、凸部にのみレーザーを照射し表面を平坦化させる。表面の凹凸不整が強い場合には、ゴルフメスで擦過し、表面を可能な限り平滑にしておく。
    • 再発性角膜びらんなど上皮接着不良例
      上皮剥離刀などで角膜上皮やdebrisを除去し、ボーマン膜を露出させる。照射径は接着不良部位を含めるように大きく設定し、10μm程度の照射を行う。
  4. 照射が終わったら、抗菌薬の点眼とソフトコンタクトレンズを装用して、手術を終了する。

術後管理

術後は、感染防止のための抗菌薬(キノロン系)、0.1%フルメトロンを1日4回投与する。6~7mmの照射径の角膜上皮欠損部は、通常3~4日で上皮化する。その間の疼痛管理と感染防御が必要である。コンタクトレンズ除去が早すぎると角膜上皮の再剥離が生じることがあるので、創傷部の脆弱性が疑われる場合は、コンタクトレンズの装用を延長する。また、術後1~3ヵ月は、上皮化混濁(ヘイズ)が出る可能性があるため、ステロイドやトラニラストの点眼を続行する。

術後合併症

レーザー照射部は角膜菲薄化と同時に平坦化が生じるために、1ないし2D程度の遠視化が生じる。そのため、術前の屈折に応じて患者への十分な説明が必要である。また、PTKは原疾患の根本的治療ではないため、疾患によっては、再発は避けられないことも患者に伝えておかなければならない。まれではあるが、術後は角膜上皮が欠損している状態に加え、ステロイド点眼、ソフトコンタクトレンズの連続装用など、感染が起こりやすい環境であることにも注意しておく。

PTK術後に起こる可能性のある合併症

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代表疾患に対するPTK

①角膜ジストロフィに対するPTK

角膜ジストロフィは、遺伝性、両眼性,進行性、限局性に角膜混濁を来す非炎症性の疾患である。角膜混濁は、遺伝子変異によって変質した蛋白質が沈着したためと考えられている。混濁が瞳孔領にかかり、角膜表層に局在している症例が、PTKの適応となる。角膜混濁の深度は細隙灯顕微鏡でも確認できるが、前眼部OCTやScheimpflugカメラにより定量的に測定することができる。

実際の手術方法は、レーザーで角膜上皮を除去した後、角膜実質の切除を行う。事前に確認した混濁の深度近くまで切除し、光学部の混濁の有無を確認しながら、視力回復が期待できる深度まで切除を進める。理論的には、エキシマレーザーは均一な面照射により組織を均一な深さに除去するが、実際は、PTKによる組織切除部は平坦化し術後の屈折は切除量に応じて遠視化する(図1)(図2)。

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②帯状角膜変性症に対するPTK

帯状角膜変性症は、角膜上皮下にリン酸カルシウムが沈着し、角膜実質の表層部が混濁する疾患である。混濁が角膜上皮下に局在するため、ゴルフ刀等による表層切除でも除去可能であるが、PTKの良い適応である。混濁の深度は、前眼部OCTでは確認可能だが、Scheimpflugカメラでは、ボーマン膜下での散乱が強いため、正確な深度の評価は難しい。実際の手術方法は、角膜ジストロフィに対するPTKに準じて行われる。切除深度は比較的少ないため、術後のKeratectasiaのリスクは少ないが、再手術となる場合もあるため、角膜厚の管理には注意する必要がある。また、高度な沈着がある場合は、機械的な除去を行うことも検討する。PTKによる沈着部位の切除量は正常部位より少なくなるため、沈着の多い照射域の中心部に比べて、沈着の少ない周辺部の方が深く切除される。ゆえに、術後の角膜形状は角膜ジストロフィに対して角膜形状の平坦化は少ない(図3)(図4)

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