JAPANESE  |  ENGLISH

Mooren潰瘍の診断と治療

1.Mooren潰瘍の病態

Mooren潰瘍は角膜周辺部に生じ特徴的な形態を呈する非感染性、進行性の難治性潰瘍である。潰瘍発生には自己免疫の関与が示唆されており、上皮基底膜に免疫グロブリンの沈着がみられ、Ⅱ型アレルギー反応と考えられている。白内障手術や角膜移植術、化学外傷、異物等が誘因となって角膜組織より抗原が放出され、抗原抗体反応から生じた免疫複合体が輪部や周辺角膜において血管炎や補体の活性化を引き起こすことで周辺部角膜が障害される。

2.臨床所見・診断基準

発症に性差はなく、50~60代の中高年に多い。また8割は片眼性である。
自覚症状は頻度の高い順に充血、眼痛、異物感、視力低下であり、以下の診断基準の主要所見を全て満たし、かつ除外事項のいずれにも該当しないものをMooren潰瘍と診断する。

<診断基準> (H-22-24特発性周辺部角膜潰瘍研究班)

主要所見:
  1. 急性に発症
  2. 輪部に沿って生ずる円弧状潰瘍
    ①細胞浸潤を伴う②潰瘍は急峻な掘れ込みを伴う③透明帯を伴わない
  3. 輪部に並行して潰瘍が進展
  4. 毛様充血を伴う
除外事項:
  1. 膠原病
  2. 兎眼、眼球突出、感染症等に起因する角膜潰瘍
  3. カタル性角膜潰瘍(浸潤)

3.診断のポイント

特徴的な角膜潰瘍の形態が診断のポイントである。初期の病像は周辺部角膜の実質浅層に細胞浸潤を認め、カタル性角膜浸潤に類似しているが、数週間程度の比較的短期間のうちに進行し、上皮欠損と角膜実質の菲薄化が進行する。角膜実質は深く掘れ込み(undermined)、潰瘍縁は周辺部へ鋭角に突出しており、overhanging edgeと呼ばれる。また、潰瘍に隣接する輪部結膜は腫脹し充血を伴う。重症例では潰瘍が全周に及ぶこともあり、まれに角膜最周辺部で穿孔することもある。

4.治療

  • 内科的治療
    まず副腎皮質ステロイドの局所及び全身投与を行い、奏功しない場合には免疫抑制剤(シクロスポリン)の局所及び全身投与を併用することが多い。

    投与例: 0.1%ベタメタゾン点眼4~6回/日、ベタメタゾン内服1~2mg/日、
    シクロスポリン内服100~150mg/日
  • 外科的治療
    Brownの結膜切除術、角膜上皮形成術keratoepithelioplasty(KEP)、輪部移植術limbal transplantation(LT)、表層角膜移植術lamellar keratoplasty(LKP)、羊膜移植術amniotic transplantation(AMT)等が行われている。結膜切除術は、潰瘍の範囲が1象限以内で角膜の菲薄化が軽度の場合には有効とされるが、術後いったん鎮静化した潰瘍部に再生した結膜が接触し、潰瘍が再発することがある。潰瘍の範囲が1象限以上の場合は、潰瘍底を掻爬した上でKEPを行うことが有効である。KEPは再生結膜組織の侵入をlenticuleの結膜側で阻止することができるため、再発予防効果も期待できる。さらに潰瘍が角膜中央部まで進行した場合や穿孔を来した場合には、LKPとKEPの併用が必要となる。術後は、抗炎症、拒絶反応予防のため治療用ソフトコンタクトレンズ装用及びステロイドや免疫抑制剤の局所・全身投与を行う。

5.鑑別疾患

リウマチ性疾患による周辺部角膜潰瘍やTerrien角膜変性症、カタル性潰瘍、兎眼や眼球突出に起因する角膜潰瘍等との鑑別を要する。
リウマチ性角膜潰瘍は、Ⅲ型アレルギー反応による血管炎が関与しており、角膜輪部や結膜に免疫複合体が沈着し、補体が活性化され組織障害が生じることで発症するとされる。通常両眼性に強い血管炎や強膜炎を伴い、時に急速に角膜が菲薄化し傍中心部付近で角膜穿孔を来すことがある。また高度のドライアイを合併することが多く、患眼だけでなく健眼の涙液所見をみることも鑑別診断に際して有用である。
Terrien角膜変性症は多くは両眼性であり、角膜輪部に平行して実質混濁及び菲薄化が年単位でゆっくり進行する。通常は非炎症性であり、結膜充血や細胞浸潤、上皮欠損を伴わない。
カタル性潰瘍は輪部と病巣の間に透明帯を伴うこと、眼瞼炎を伴うことから鑑別できる。

PAGETOP
Copyright © 日本角膜学会 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.