角膜縫合、抜糸の基本手技

1.はじめに

外傷性角膜穿孔などの症例を前に、急遽角膜縫合をせざるを得ない状況に遭遇する。角膜縫合は強い角膜乱視を惹起するなど、視機能に直結するものであり、正しい手技の会得が望まれる。一方、角膜内に存在している縫合糸がゆるんでいると感染の契機となるため、できるだけ早く抜糸する必要がある。抜糸も簡単なようであるが、正しい認識を持たないと創の離解などの問題が発生しうるので注意が必要である。

2.角膜縫合

a.角膜縫合の原則

結膜や眼瞼とは異なり、角膜は層板構造をもった弾力性をもった組織である。縫合に際し角膜特有の原則に即した縫合を行う必要がある。

原則その1は「縫合糸の刺入・刺出部は層板構造に並行か垂直に行う」である(図1)。

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このため、まず角膜の厚みの9割を占める角膜実質の層板構造に対し、垂直に針を刺入させる必要がある。また角膜の創部においては上皮面に平行に針を刺出させる。感覚的に言い換えれば、「しっかりと角膜に針を立てて縫合する」ということになろう。こうすることで角膜実質のより深いところまで通糸が可能となり、広い圧着面積を得ることができる。

原則その2は「角膜を把持する点と縫合糸で一つの面を形成させる」というものである(図2)。通糸予定部位の直上の角膜を鑷子で把持することにより、ゆがみを形成することなく通糸ができる。

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b.複雑な角膜創の縫合

外傷による角膜裂傷の場合、創は複雑な形になっていることが多い。このような場合、創が屈曲したような部分などを先に縫合し、ずれを極力さける必要がある(図3)。まず創全体の位置あわせを先にしてから縫合を追加していくとよい。

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c.結紮部の埋没

3.角膜抜糸

ナイロン糸の場合、角膜実質内に埋没されていれば放置することが可能である。抜糸が必要となる条件として、糸の緩み等で糸が表面に露出している場合、感染巣ができた場合、縫合糸に向かって血管新生が起こった場合などである。以下注意点を列挙する。

a. 創を開く力を加えない

角膜内の創は縫合後長期間経過しても接着力はそれほど強くなっていない。糸を引き抜く際に創を開く方向の力を加えないように注意する(図4)。糸がスムーズに抜けない場合はもう一本のセッシやメスの“背”で角膜を押さえるようにしてカウンタープレッシャーを当てる。

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b.露出した糸を残さない

時に抜糸しようとしても結紮部が引っかかり抜去できない時がある。このような場合でもセッシで糸をつまみ上げ角膜上皮面で切断することにより縫合糸の断端は実質内に埋没していく(図5)。このような配慮もしながら、決して上皮面に露出した糸を残さないようにすることが肝要である。

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c. 連続縫合は一部を抜糸すれば順次緩む

連続縫合の場合、一部を抜糸すると隣接部が順次緩んでいく。全抜糸するならば問題ないが、一部の連続縫合を残す場合は診察間隔を短めにして糸の緩みの有無を厳重に監視していく必要がある。

d. 患者教育

手技とは離れるが、角膜内に糸が残っている限り、突然糸が浮き出してくる可能性があることを考えておく。異物感や充血などの異常が続く場合には早めに眼科を受診するように教育しておくことも大切である。

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